単価は、最初に決めた額のまま何年も据え置かれがちです。会社員の給与と違って、黙っていても上がることはありません。この記事では、既存クライアントに値上げを切り出すタイミング、断られにくい根拠の作り方、伝え方の手順と、そのまま使えるメール文例 4 つをまとめました。
値上げを切り出すタイミング
- 契約更新や年度替わり(4 月・10 月)など、条件を見直す「区切り」があるとき
- 業務範囲が最初の合意より広がったとき(範囲が増えた時点で言うのが最も自然)
- 成果が数字で出たとき(売上・CV・PV・納期短縮など、クライアント側の指標が改善した直後)
- 継続して 6 か月〜1 年が経ち、信頼関係ができたとき
- 繁忙期の前(クライアントが代わりを探しにくい時期)
- 自分の実績時給が目標を下回っていると分かったとき(記録があると根拠になる)
逆に避けたいのは、納品トラブルの直後や、クライアントの予算が締まった直後です。また、伝えるのは適用の 1〜2 か月前にします。来月から、では相手の予算が動かせません。
断られにくい根拠の作り方
| 根拠 | 具体例 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 業務範囲の拡大 | 当初はデザインのみ → 現在はコーディングと更新作業も担当 | 当初の見積・契約と現在の作業一覧 |
| 実績時給の低下 | 修正や打ち合わせが増え、実績時給が 3,000 円を下回っている | 案件ごとの稼働時間の記録 |
| 成果 | 担当後に問い合わせが 1.5 倍、納期遅延ゼロ | クライアント側の数字(共有されているもの) |
| 相場 | 同種の案件の相場は ○○〜○○ 円 | 求人・案件サイトの相場、同業者の情報 |
| コストの上昇 | インボイス登録で消費税負担が発生、ツール費・外注費の上昇 | 実際の費用の増加額 |
| スキル・資格 | 新しい技術や資格を取得し、対応範囲が広がった | 対応できるようになった業務の一覧 |
根拠は 1 つで十分です。多すぎると言い訳に聞こえます。最も強いのは「業務範囲の拡大」と「成果」で、クライアントの側から見ても納得しやすい理由です。
伝え方の手順
- 新しい単価を具体的に決める(目標年収から逆算した必要単価と、相場の両方を見る)
- 適用時期を決める(1〜2 か月後の契約更新や月初)
- 根拠を 1 つ選び、数字で言えるようにする
- 先に口頭やチャットで一言伝え、正式な内容をメールで送る(いきなりメールだけは避ける)
- 選択肢を用意する。「単価を上げる」か「現在の単価のまま業務範囲を絞る」かを相手が選べるようにすると、断られにくい
- 断られた場合の線を決めておく(段階的に上げる/範囲を絞る/契約を終える)
上げ幅の目安は 10〜20%。2 年以上据え置かれていた場合や業務範囲が明らかに増えている場合は 20〜30% でも根拠は立ちます。一度に大きく上げるより、半年ごとに段階的に上げる提案のほうが通りやすいこともあります。
やりがちな NG
- 「申し訳ないのですが…」と謝りながら切り出す。値上げは謝ることではなく、条件の見直し
- 根拠を言わない、または「生活が苦しい」など自分側の事情だけを言う
- 適用時期を言わない。相手が判断できない
- 相手の返事を待たずに新単価で請求する
- 断られた瞬間に全部引っ込める。範囲の調整など中間案を出す
文例 1: 継続案件の契約更新時
件名: 次回更新時の単価見直しのご相談(○○業務)
株式会社〇〇 △△様 お世話になっております。山田太郎です。 〇〇業務を担当させていただき、来月で 1 年になります。日頃よりご依頼いただき、ありがとうございます。 次回の契約更新(2027 年 1 月分から)にあたり、単価の見直しをご相談させてください。 現在: 月額 100,000 円(税抜) ご提案: 月額 115,000 円(税抜) 理由として、当初の業務範囲(記事制作 4 本/月)に加え、現在は構成案の作成と公開後の修正対応も担当しており、実稼働が当初の約 1.4 倍になっております。 ご予算の都合で難しい場合は、現在の単価のまま業務範囲を当初の内容(記事制作のみ)に戻す形でも対応可能です。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 山田太郎
文例 2: 業務範囲が広がったとき
件名: 追加業務のお見積りについて(○○サイト更新業務)
△△様 お世話になっております。山田太郎です。 先日ご相談いただいた、SNS 用バナーの制作と月次レポートの作成につきまして、現在の契約(サイト更新業務: 月額 80,000 円)には含まれていない作業となるため、次のとおりお見積りいたします。 ・SNS バナー制作: 1 点 8,000 円(月 4 点想定で 32,000 円) ・月次レポート作成: 月額 15,000 円 上記を含めた場合、月額 127,000 円(税抜)となります。 一体でのご契約がよろしければ、月額 120,000 円(税抜)にてお引き受けすることも可能です。 ご確認のうえ、ご希望の形をお知らせください。 山田太郎
文例 3: コスト上昇(インボイス登録など)を理由にするとき
件名: 2027 年 1 月以降の単価改定のお願い
△△様 お世話になっております。山田太郎です。 2027 年 1 月納品分より、単価を以下のとおり改定させていただきたく、ご連絡いたしました。 現在: 文字単価 3.0 円(税抜) 改定後: 文字単価 3.5 円(税抜) 2026 年よりインボイス発行事業者として登録し、消費税の納税負担が生じていること、また取材・資料購入などの実費が上昇していることが理由です。 貴社からは適格請求書を発行しておりますので、仕入税額控除は従来どおりご利用いただけます。 急なお願いで恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。ご不明点があればお気軽にお知らせください。 山田太郎
文例 4: 新規案件の見積で単価を上げて提示するとき
新規案件は既存案件より単価を上げやすい場面です。既存の単価に引きずられず、現在の必要単価で見積を出します。
△△様 お世話になっております。山田太郎です。 〇〇の件、お見積りをお送りいたします。 ・要件整理・構成案: 40,000 円 ・デザイン(トップ+下層 3 ページ): 180,000 円 ・コーディング: 120,000 円 ・合計: 340,000 円(税抜) 修正は各工程 2 回まで含みます。納期はご発注から 6 週間を想定しています。 現在の単価体系でのお見積りとなっており、以前ご依頼いただいた案件とは単価が異なりますこと、ご了承ください。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 山田太郎
断られたときの対応
- 「範囲を絞る」案を出す。単価は同じで作業を減らせば、実質の値上げになる
- 「半年後に再度ご相談」と時期を区切って引く。次回の交渉がしやすくなる
- 段階的な引き上げ(今回 5%、半年後 5%)を提案する
- どうしても合わない場合は、新規クライアントを増やして依存度を下げる。1 社への依存が 50% を超えると交渉で弱くなる
なお、フリーランス新法では、発注側が合意なく一方的に報酬を減額することは禁止されています(1 か月以上の継続的な業務委託)。単価の交渉は対等な条件の見直しであり、引け目を感じる必要はありません。
よくある質問
値上げを言ったら契約を切られない?
根拠があり、幅が 10〜20% で、選択肢を示していれば、値上げだけを理由に切られることはまれです。切られるとしたら、もともと代替しやすい業務だった可能性が高く、その場合は単価を据え置いても長くは続きません。
口頭とメール、どちらで伝える?
先に打ち合わせやチャットで「次回更新のときに単価のご相談をさせてください」と一言伝え、正式な金額と理由はメールで送ります。記録が残り、相手も社内で共有しやすくなります。
実績時給はどうやって出す?
案件ごとに稼働時間を記録し、報酬額 ÷ 稼働時間で出します。修正・打ち合わせ・連絡の時間も含めます。記録が 1〜2 か月分あれば、「この案件は実績時給が 2,800 円で、目標の 5,000 円を大きく下回っている」と数字で言えます。
まとめ
- タイミングは契約更新・範囲拡大・成果が出た直後。適用の 1〜2 か月前に伝える
- 根拠は 1 つ。業務範囲の拡大と成果が最も通りやすい
- 新単価・適用時期・理由・選択肢(単価アップか範囲縮小か)をメールで明示する
- 断られたら範囲調整か段階的引き上げを提案し、依存度を下げる
クライアント別の売上と依存度を 1 画面で
FreelanceOS の Pro+ ではクライアント別の売上・構成比・依存度を自動集計。交渉前に「この取引先に何% 依存しているか」が分かります。
無料ではじめる