仕事を納品してから実際にお金が入るまでの期間を「支払サイト」と呼びます。フリーランスにとって支払サイトは資金繰りそのもので、同じ売上でも入金が 1 か月遅れるだけで、生活費や納税の月に現金が足りなくなることがあります。この記事では、支払期限の決め方と、取引先と条件を決めるときに知っておきたいルールをまとめました。
「締め日」と「支払日」の意味
| 条件 | 意味 | 10/5 に納品した場合の入金 | 10/25 に納品した場合の入金 |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | その月の納品分をまとめて月末で締め、翌月末に支払う | 11/30(56 日後) | 11/30(36 日後) |
| 月末締め翌々月末払い | 月末で締め、2 か月後の月末に支払う | 12/31(87 日後) | 12/31(67 日後) |
| 20 日締め翌月 10 日払い | 20 日で締め、翌月 10 日に支払う | 11/10(36 日後) | 12/10(46 日後) |
| 納品後 30 日以内 | 個別の請求ごとに期限を決める | 11/4(30 日後) | 11/24(30 日後) |
日本の企業間取引では「月末締め翌月末払い」が最も一般的です。締め日の直前に納品すると入金が早く、締め日の直後に納品すると最長で約 2 か月待つことになります。
フリーランス新法の「60 日ルール」
2024 年 11 月施行のフリーランス新法では、従業員を使用する発注者がフリーランスに業務を委託した場合、成果物を受け取った日(役務の提供を受けた日)から起算して 60 日以内のできるだけ短い期間内で支払期日を定め、その日までに支払う義務があります。支払期日を定めなかった場合は受領日が、60 日を超える期日を定めた場合は受領日から 60 日目が支払期日とみなされます。
- 「月末締め翌月末払い」は最長でも約 61 日になることがあるため、月末締め翌月末払いが 60 日以内に収まるかどうかは締め日と受領日の関係で確認が必要(厚生労働省・公正取引委員会の Q&A では、月単位の締切制度の場合は「受領から 60 日以内」の考え方を一定の範囲で認めています)
- 「翌々月末払い」は受領日によっては 60 日を超えるため、発注者が従業員を使用する事業者なら新法上の問題になりうる
- 発注者が従業員のいない個人の場合は、60 日ルールの対象外(取引条件の明示義務はある)
再委託(元請けから受けた仕事を、さらにあなたに委託する)の場合は、元請けが元の発注者から支払いを受ける日から 30 日以内という特例もあります。細かな取扱いは公正取引委員会・厚生労働省のフリーランス新法の Q&A で確認してください。
フリーランス側から提案するなら
| 案件のタイプ | おすすめの支払条件 | 理由 |
|---|---|---|
| 単発・小額(〜10 万円) | 納品後 14〜30 日以内 | 取引先の締め日を待たずに回収できる |
| 単発・高額(30 万円〜) | 着手金 30〜50%+残額は納品後 30 日以内 | 途中キャンセルと資金繰りのリスクを下げる |
| 長期(1 か月以上) | 月ごとの分割請求、または工程ごとの中間金 | 最後まで入金がない期間をなくす |
| 継続案件(保守・運用) | 月末締め翌月末払い | 取引先の経理フローに合わせて揉めにくい |
大きな企業は経理の締め日が決まっていて、個別の期限には応じてもらえないことも多いです。その場合も、着手金や分割請求なら受け入れられることがあります。条件は見積書の備考欄に書いて、発注前に合意しておくのが確実です。
請求書に支払期限を書くときの注意
- 「お支払期限: 2026 年 11 月 30 日」のように日付で書く。「翌月末」とだけ書くと解釈がずれる
- 支払期限が土日祝の場合の扱い(前営業日か翌営業日か)を、継続取引なら最初に確認しておく
- 振込手数料の負担(通常は支払う側)を書いておく
- 請求書番号と支払期限を台帳に記録し、期限翌日に入金を確認する。未入金なら 3 営業日以内に連絡する
支払サイトと資金繰り
支払サイトが 60 日の取引先が多いと、独立直後は 2 か月間ほとんど入金がない状態になります。最初の数か月の生活費と、3 月の所得税・6 月からの住民税・国保の支払いに備えて、入金予定を月ごとに一覧にし、残高が足りなくなる月を先に把握しておくことが大切です。
よくある質問
支払期限を過ぎても入金されない場合は?
まずは確認の連絡を入れます。経理の処理漏れや、請求書が担当者に届いていないことが原因の大半です。請求書番号・金額・期限を書いて丁寧に確認し、それでも支払われない場合は、フリーランス新法の対象であれば「フリーランス・トラブル110番」に相談できます。
取引先の支払条件が翌々月末払いと決まっている場合は?
発注者が従業員を使用する事業者なら、受領から 60 日を超える期日は新法上の問題になりえます。いきなり指摘するより、「分割請求」や「着手金」の形で入金を早められないか相談するほうが関係を保ちやすいです。
個人のクライアントにも 60 日ルールは適用される?
従業員のいない個人の発注者には、60 日以内の支払義務は適用されません。ただし取引条件(報酬額・支払期日など)の明示義務はすべての発注者にあります。個人との取引ほど、見積書と承諾メールで期限を残しておくことが大切です。
まとめ
- 一般的なのは「月末締め翌月末払い」。納品のタイミングで入金までの日数が 30〜60 日ほど変わる
- 従業員を使用する発注者は、受領から 60 日以内に支払う義務がある(フリーランス新法)
- 高額・長期の案件は着手金や分割請求で、入金がない期間を短くする
- 期限は日付で書き、台帳で期限翌日に入金を確認する