ふるさと納税は、寄附額から 2,000 円を引いた額が所得税と住民税から差し引かれる制度です。会社員なら「年収○○万円なら上限○万円」という早見表で済みますが、フリーランス・個人事業主は事情が違います。早見表は給与収入が前提なので使えず、確定申告をするのでワンストップ特例も使えません。この記事では、フリーランスが上限額を自分で計算する方法と、確定申告での書き方を整理します。
先に結論: フリーランスのふるさと納税 3 つのポイント
- 上限額は「売上」ではなく、経費・青色申告特別控除・社会保険料(国保・年金)などを引いた後の住民税の課税所得で決まる
- ワンストップ特例は使えない。確定申告書の「寄附金控除」に書く(申請していても確定申告をすると無効になる)
- 売上が 12 月まで確定しないので、年末に見込みを確認し、計算した上限の 9 割程度までにとどめる
上限額の計算方法
寄附額のうち 2,000 円を超える部分は、①所得税(寄附金控除)、②住民税の基本分(10%)、③住民税の特例分 の 3 つから差し引かれます。③の特例分には「住民税所得割額の 20%」という上限があり、これを超えない寄附額が、自己負担 2,000 円で済む上限です。
| 手順 | 計算 | メモ |
|---|---|---|
| 1. 事業所得 | 売上 − 経費 − 青色申告特別控除 | 青色 65 万円は e-Tax + 複式簿記の場合 |
| 2. 住民税の課税所得 | 事業所得 − 社会保険料(国保+国民年金)− 基礎控除 43 万円 − その他の控除 | iDeCo・小規模企業共済・生命保険料・扶養なども引く |
| 3. 住民税の所得割額 | 課税所得 × 10% − 調整控除 | 調整控除は多くの人で 2,500 円 |
| 4. 所得税の税率 | (課税所得 − 5 万円)を所得税の税率表に当てはめる | 5〜45%。195 万円以下 5%、330 万円以下 10%、695 万円以下 20% など |
| 5. 上限額 | 所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税率 × 1.021)+ 2,000 円 | 1.021 は復興特別所得税の分 |
手順 4 の「5 万円」は、所得税と住民税の基礎控除の差(人的控除差調整額)の分です。配偶者控除・扶養控除がある人はこの差が大きくなります。正確な判定は自治体の計算に従います。
売上別の上限額の目安
| 年間売上 | 経費(売上の 20%) | 事業所得(青色 65 万円控除後) | 上限の目安 | iDeCo 満額(年 81.6 万円)の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 300 万円 | 60 万円 | 175 万円 | 約 2.2 万円 | 約 0.3 万円 |
| 500 万円 | 100 万円 | 335 万円 | 約 6 万円 | 約 3.7 万円 |
| 700 万円 | 140 万円 | 495 万円 | 約 11 万円 | 約 7.5 万円 |
| 1,000 万円 | 200 万円 | 735 万円 | 約 17.2 万円 | 約 14.8 万円 |
| 1,500 万円 | 300 万円 | 1,135 万円 | 約 34.2 万円 | 約 26.5 万円 |
独身・扶養なし、国民年金 月 17,920 円、国保は(所得 − 43 万円)× 10% + 均等割 6 万円(上限 109 万円)で概算した目安です。配偶者・扶養控除、医療費控除、住宅ローン控除、給与などほかの所得がある場合は変わります。自分の数字は無料の上限額シミュレーターで計算できます。
上限額が変わる要因
- 経費・青色申告特別控除・iDeCo・小規模企業共済が増えると、課税所得が下がるので上限も下がる(ただし、それぞれの節税効果のほうが大きいので、上限を上げるために控除を減らすのは損)
- 国保・国民年金の社会保険料控除も所得から引かれる。会社員の早見表より上限が小さく出やすいのはこのため
- 住宅ローン控除を使っている人は、所得税から引ききれない分が住民税から引かれるため、上限が下がることがある
- 赤字の年や所得が少ない年は、住民税の所得割がほとんどなく、上限も小さい(所得割がなければ寄附はほぼ全額自己負担)
確定申告での書き方
- 寄附先の自治体から届く「寄附金受領証明書」を保管する。ふるさと納税サイトによっては、複数の寄附をまとめた「寄附金控除に関する証明書」(電子データ)を発行でき、e-Tax に読み込ませると入力の手間が省ける
- 確定申告書の第一表「寄附金控除」の欄に、(寄附額の合計 − 2,000 円)を書く。e-Tax・確定申告書等作成コーナーでは、寄附先と金額を入力すれば自動で計算される
- 第二表の「寄附金控除に関する事項」に寄附先の名称と金額を書き、住民税に関する事項の「都道府県、市区町村分」の欄にも寄附額を記入する(ここを忘れると住民税の特例分が反映されない)
- ワンストップ特例を申請していても、確定申告をすると特例は無効になる。申請した寄附も含めて、すべての寄附を確定申告に書く
年末の注意点
- 今年分になるのは 12 月 31 日までに決済(入金)された寄附。年末はサイトや決済が混み合うので余裕を持って
- 12 月に入ったら、請求済み・未請求の売上と経費の見込みを確認して、上限を計算し直す
- 返礼品は一時所得になるが、一時所得は年 50 万円の特別控除があるため、ほかに一時所得がなければ通常は課税されない
- ふるさと納税は個人の寄附なので、事業用口座から払っても経費にはならない(事業主貸で処理する)
よくある質問
開業 1 年目でもふるさと納税はできますか?
できます。上限額はその年(1〜12 月)の所得で決まるため、会社員から独立した年は、退職前の給与と独立後の事業所得の両方が対象になります。給与の源泉徴収票の金額も合わせて計算してください。年の途中までの給与があると、事業所得だけで計算するより上限は大きくなります。
上限を超えて寄附してしまったら?
罰則はなく、上限を超えた分が控除されないだけです。超えた分はそのまま自己負担になります。見込みが外れやすいフリーランスは、計算した上限の 9 割程度にしておくと安全です。
控除はいつ、どのように反映されますか?
所得税の分は確定申告で税額が減る(源泉徴収されていれば還付が増える)形で、住民税の分は翌年 6 月からの住民税が減る形で反映されます。2026 年中の寄附なら、2027 年 3 月の確定申告と 2027 年度の住民税です。
本記事は 2026 年 10 月時点の制度に基づく概算の説明です。令和 8 年度税制改正で、2027 年の寄附分から住民税の特例控除額に 193 万円(給与収入 1 億円相当)の上限が設けられますが、一般的な所得のフリーランスには影響しません。正確な控除額はお住まいの自治体・税務署にご確認ください。